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カリフォルニアロールに巻かれて

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たった一人で作りあげた『The Watts Towers』

日曜日に The Watts Towers(ワッツタワー)を見に行ってまいりました。
このワッツタワー、治安が悪いと言われる地域と隣り合っておりますが、コンプトンの通りを通らないように、車で道に迷わないようにきっちり調べて行きました。

タワーの横が公園になっております。
日曜日の昼間、周囲は想像とは違い、穏やかな雰囲気。

椅子に座っていた黒人の女の人に「タワーが見たいならこちらでチケットを買ってね」と話しかけられました。

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あまりにも警戒していた為、騙されていない?なんて思った自分に後で少し後悔することに。
なぜならば、凄くいい方だったのです。

↓The Watts Towers Arts Center
(こちらでチケットが買えます。キャッシュオンリー。)

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アートセンターの中にはギャラリーもあり、現在開催されている Alison Saar の作品が本当に良かった。
ワッツタワーについての映像も見ることが出来ます。

↓外に置いてある椅子も素敵!

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↓タワーからイメージを受け他のアーティストが作った作品。これもおもしろい。

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センターの裏には立派な木が。

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アスファルトを盛り上げる位、パワフル。

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そして、
↓こちらが、The Watts Towers(ワッツタワー)。
高さ約30メートル。

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タワーの保護の為に柵が作られております。

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案内してくれる時間になり、チケットの半券を渡し、黒人のおじちゃんガイドが柵内に入れてくれました。

このワッツタワー。
一人の男、Simon Rodia(サイモン・ロディア)が1921年から1954年まで33年をかけて、一人で作り上げたタワーです。

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イタリアで生まれた彼は15歳の頃、兄を頼ってアメリカに移りました。
兄が鉱山事故で死んで以降、彼は一人になりシアトルやオークランドを点々とし工事現場で働いていたそうです。
シアトルでは結婚し、3人の子供もいましたが、離婚し、それ以降親しい友人も居なく、ワッツ地区での生活は孤独なものだったのかもしれません。

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彼はワッツ地区で日雇い労働者として働いていました。
1921年、42歳の時に突然、三角の土地を買い、敷地内横に小さな家を建て、タワーを作り始めます。

建築に関わる教育は一切受けてきていない彼は、全て見よう見まね。
溶接されていない鉄の棒を細かく組み合わせ、それに金網を巻き付けセメントで固め、拾った空き瓶、カラフルなタイルの破片、お皿、貝殻などを埋め込んで接着していきます。

↓緑色は、アメリカでおなじみの飲み物、セブンアップの空き瓶。

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↓左右下に埋められている「1765」の数字は、こちらの番地。

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郵便受けには、彼の名前、サイモン・ロディアのイニシャル、『S・R』が彫られております。
実際には彼宛の郵便は殆ど来なかったかもしれません。
そもそも英語も読めなかったのでは?という記事もありました。

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ただ拾ってきたものを、そのまま埋め込んでいった訳ではありません。
天性の感覚で、色とりどりに、しかも緻密に。
彼は仕事が休みの時に、少しずつ少しずつ、こつこつと作り進めていきました。

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ボルトや溶接、電動工具を一切使わず、足場も組まず、タイル職人の簡単な道具と窓拭き掃除人が使うベルトやバックルを使用して自分のタワーを自体を足場にし、作っていきます。

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南カリフォルニアの歴史家によると、ロディアの英語理解力が充分であったかは不明であるが、ブリタニカ大百科事典で、偉人伝を繰り返し読んでいたそうです。

自分の知る、ミケランジェロ、マルコポーロ、コロンブスやガリレオ、そして、周囲に住むメキシコ移民の影響をとても受けたそうです。

黒人のガイドさんが、
「全体が sailing ship(帆船)をイメージにして作られている」と教えてくれました。

なるほど。
この船は東の方向、故郷イタリアの方を向いています。
これは偶然?彼がこの三角の土地を買った時点で、全て計画されていたのでしょうか。。。。凄い。

↓『船首』部分にはハート型の飾りが掲げられています。

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↓『マスト』部分にも沢山のハートが。

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彼の作ったこの建造物には沢山のハート型が見られます。

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↓ガイドさんに、「まるで巨大なウエディングケーキのようでしょう」と言われました。
本当だ。
沢山のハートといい、ウェディングケーキといい、孤独と言われた彼がどういう想い入れで作ったのか。
いろいろな想像を一人しました。

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近所の人からは、変人、狂人扱いをされていたロディア。
ちょうどこのタワーは、戦争中には日本と、また1950年代の冷戦時代には、ソビエトと連絡をとる秘密のタワーだというデマも飛び、スパイなのではないのかとも思われていたそうです。

近所の子ども達からは石を投げ込まれたり、苦情があったり。。。
42歳から作り始めて33年、1954年75歳になった彼は建造が終わると隣人に土地を譲り、この地を去りました。

その後、二度と自分が作り上げたこのタワーを見にワッツに戻ってはきませんでした。

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このタワーは違法建築なので、1959年に政府による取り壊しの危機が迫りましたが、この建造物の価値に注目した映画業界人、美術研究者、建築家らの働き掛けによって救われました。
取り壊しを逃れる条件の構造テストでは、機械(車)が壊れてしまうほど強かったそうです。

その後1990年に、アメリカ国定歴史建造物に指定され、ワッツ地区を舞台にしたテレビ番組や映画では欠かせない風景として親しまれているそうです。

1994年のロサンゼルス地震(ノースリッジ地震)では被害が出ましたが、修復が行われました。


「たった一人の男が作り上げた」と聞くと、フランスにある『シュヴァルの理想宮』の存在を耳にした事があり、思い浮かびました。
郵便配達員の男がたった一人で、こつこつ、こつこつと石を積み重ねていく。
33年後に、完成したのが↓こちら。

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ワッツタワーを一人で作り上げたサイモン・ロディアも33年かかった。
本当にたった一人で何か一つをやり遂げるには、30年以上の年月が必要なのかもしれません。

ロディアは、「なぜ、タワーを作るのか?」と聞かれた際に、

"I wanted to do something big and I did it."

「何か大きなことをしたかった。だから、やった。」

と答えているそうです。


アートセンターのスタッフも暑い中を汗だくでタワー内を説明してくれたガイドのおじちゃんも本当にいい方ばかりで感謝しております。

もし、日本からの旅行者さんで、ワッツタワーに行かれる方で英語に自信のない方は、ぜひ始めにガイドさんに伝えてください。
私達も伝えたうえで、一生懸命聞き取ろうと頑張りました。
分からない単語で気になったものは、その場ですぐにオウム返しで聞いてみると教えてくれます。

ガイドのおじちゃんに、「君たちはアーティストか?」と聞かれて「そうです、アメリカのアートを勉強に来ている」と答えるととても喜んで握手してくれました。
自分がものを作りあげていくうえで、このワッツタワーを近くで見られたことはとても良かったです。

ワッツタワーでは小学生の集団見学なども行われていたりします。
タワーを囲む道や公園は穏やかで、警備員もいますが、治安の悪いコンプトンが隣接しており、怖いもの見たさで訪れる人も居るようです。
たとえ治安が悪くてもここで生活している人が大勢います。
なぜ、治安が悪いのか、なぜ外部の人間を嫌うのか、それには歴史も関わってくるので、ただの興味半分では訪れるのはやめた方がいいと私は思います。

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最初にワッツ地区に到着しタワーを見た時は、意外と小さいんだなぁと思ったのですが、帰る頃にはとても大きく、高く見えました。
俗世間からしたら、ただのガラクタで作られたタワーが、足元から見ると太陽の光溢れる空へと高く、どこまでも伸びていきそうでした。

孤独と言われている彼が、写真や映像では笑顔が素敵で、タワーにハートが沢山あるように、愛に満ち溢れているように思えます。
タワーに埋め込んである人形が茶目っ気のある彼自身にも見えました。

↓あるアーティストが編集した動画。
(音楽がちょっと気になりますが、上空からの映像も見られます。)



道具を撫でる手、いいですよね。

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